非嫡出子(婚外子)の法的差別を考える
- 2013.07.15 Monday
- 23:13
先週からメディアでも取り上げられているこの最高裁での審判。
【非嫡出子訴訟】
結婚していない男女の間に生まれた「非嫡出子」(婚外子)の遺産相続分は嫡出子の半分、としている民法の規定が、憲法に違反するかが争われている家事審判のことです。
平成25年7月10日 最高裁大法廷での弁論はすべて終結。
そしてこの秋に憲法判断がでます。
私はかなり注目しています。
◆非嫡出子側は、
・出生については選択の余地がないのに、相続で差別的扱いをするのは法の下の平等を定めた憲法に違反している
・先進国で日本と類似する規定を設けている国はない
・高裁でこの規定を違憲とする決定が既に出ている
・立法が法的手だてを講じるべきなのに、放置されている
として、司法による救済を求めています。
◆嫡出子側は、
・法律婚の尊重のために相続格差を設けるのは合理的だ
・外国の動向は、その国の実情や法改正の経緯などを踏まえず単純に比較しても説得力はない
・既に確定した裁判の結果が再審で覆るなど、違憲判断が出された場合混乱する
「婚外子の法的差別について」、少し過去を見てみましょう。
ヨーロッパにおける婚外子に対する法的差別は、1804年の「ナポレオン法典」によって生み出されたものです。
時代を経て、1972年国連経済社会理事会の「非婚の母の地位に関する勧告」において、婚外子について「相続の一切に関して、非婚の子孫に差別があるべきではない」と発表しました
また1979年欧州人権裁判所(オランダ・ハーグ)は、「婚外子差別は違憲」との判決を出します。これにより、欧州各国が国内法の改正に追い込まれていきました。
さらに1986年国連「子どもの人権条約」で、婚外子差別は条約違反であることが明示されました。
これによって、婚外子差別を含む出生や家族構成の違いによる子どもの差別が許されないものであることは世界では動かぬものとなったのです。
では日本を見てみましょう。
日本における婚外子差別は中国の制度を導入しようとした710年の大宝令が最初です。
しかし律令制は崩壊してしまい、明治時代、ヨーロッパから民法が入ってくるまで、婚外子に対する法的な差別を持つことはありませんでした。
そして明治民法では、戸籍制度(家)の安定のため、婚外子を差別しました。
妾制度の意識もあった古い時代です。
その差別が今でも続いているのです。
国連は、日本の民法が定める非嫡出子と嫡出子の相続格差について撤廃するよう再三勧告してきました。
平成8年、法制審議会(法相の諮問機関)は格差是正を含む民法改正案を答申。
しかし国会議員らの反対が強く、法案提出には至っていない現状です。
私はこの問題は、外国がこうだからとか、世界的な流れだからとか、日本はこうだからとかいうものではなく、生まれてくる子ども自身を第一に考える場合、「婚外子であることによる婚外子自身への法的差別はおかしい」と思っています。
ネット上での寄せられた意見をみると、法律婚の尊重、差別は当然・内縁の妻が悪い、日本と外国は違う、などの声が多いです。
しかし、この世に生まれた命=子どもを第一に考えるべきだと私は考えます。
子どもを作った親は、その無垢な命すべてに、責任と義務を最初からもつべきです。
それはその子の生まれ持つ権利だと言えます。
「法的差別が決まっていること」
それはおかしいと考えます。
最高裁大法廷は15人の裁判官です。結果は多数決です。
この審判、つまり非嫡出子(婚外子)の法的差別は合憲か違憲か。
そろそろ明治民法から離れる時代に、状況に、今の日本はなっている
そう私は考えています。