事業承継 株式の相続について
- 2010.06.09 Wednesday
- 14:29
今回は中小オーナー会社での、株式の相続についてお話しします。
事例でみていきましょう。
経営者である父Aの会社の発行済株式 1000株
父A所有 500株
長男C所有 400株
母B所有 50株
長女D所有 50株
経営者の父Aは、長男Cに会社を承継するつもりであった、とします。
しかしAは何の相続対策もせずに亡くなってしまった。
とします。
相続財産は共有となります(民法898条)
従って、
遺言でAの株式500株を長男Cに相続させると定めない限り、父Aの株式500株は、母B、長男C、長女Dの共有となります。
この共有という考え方ですが、
法定相続分の割合で分割され
母Bは250株(2分の1)
長男Cは125株(4分の1)
長女Dは125株(4分の1)
をそれぞれ相続する。
となるのではありません!!
これは
母Bは2分の1、長男Cは4分の1、長女Dは4分の1
という割合で500株を共有する
となります。
この二つは全く違うことなのです
「共有株式の株主総会での議決権行使の方法は、共有持分による多数決で決する」という最高裁判決があります。
この会社の株主総会での決議を考えてみましょう。
母Bと長女Dが結託すれば500株は全て2人の自由に行使することが可能になります。
最初からBとDが持つ100株を加えると合計600株となります。
そうすると、例えば
母Bと長女Dは、父Aの意向や長男Cの承継に係わらず、会社を支配できます。
またCを廃除することもできてしまいます
「身内なんだからそれははないだろう」っていうのは甘いです。
例えば長男Cが父Aと前妻との子で、後妻Bや生まれた長女Dとうまくいっていなかったらどうでしょう。
あるいは、長女Dが自分の夫Eに会社をやらせたくて、性格が合わない長男Cを辞めさせるべく、母Bとタッグを組んだらどうなるでしょう。
「まだ自分は元気だから」と言って、何の相続対策もせずに放置しておくこと、どんでん返しをくらうことになりかねません。
事業承継は、経営、相続、財産、法律、税務、人の心裡などが複雑に絡む、とても重要なことなのです。