個人の法人成りとは −賃貸借契約との関係−
- 2010.02.13 Saturday
- 13:21
前回、「自室での営業と賃貸借契約の解除」について書きました。
その中で「ポストに営業名義を表示する」ことも解除の要因にはならない旨書きましたが、少し補足します。
まず最初に
基本的には個人と法人は別人格です。
ポストや表札に法人の名前が記載されている場合、一般的には、その法人が建物を占有していると推定されます。
いわゆる無断転貸の問題となりますので、それが貸主への背信行為と認められれば、賃貸借契約の解除理由となります。
しかし
「個人営業の法人成り」というコトバがあります。
個人営業の法人成りとは、
個人営業をしている者が税金対策などのために会社組織にすること
をいいます。
この場合の建物の解除権については
住居として外形に顕著な変化がない場合、つまり入居者にほとんど変化がなく、建物の使用状況もほとんど前と変わらない場合、賃貸借の解除権は発生しない
と考えられています。
※最高裁判例
「個人営業から法人成りすることは無断転貸ではあるが、会社の実権は従前の賃借人が掌握し賃貸建物の使用状況等も個人営業の時と実質的に
変化がない場合は、背信性はなく解除権は発生しない」
昭和39年11月19日民集18巻9号1900頁
とあります。
もちろん、建物の使用状況の変化や背信性があったかなかったかについては、具体的に検討されて判断がされます。
以上は、個人営業や個人の法人成りについてですが法人が第三者であれば、明らかに無断転貸となります。この場合はちゃんと営業用建物を探して下さい。