離婚の慰謝料

  • 2016.06.05 Sunday
  • 11:10

今回は、離婚による慰謝料についてまとめました。

裁判で言う離婚の慰謝料には、離婚原因となった個別の有責行為(例えば暴力・不貞・悪意の遺棄など)から生じる精神的苦痛の慰謝料(離婚原因に基づく慰謝料)と、離婚そのものによる精神的苦痛の慰謝料(離婚自体慰謝料)があるとされています。多くはこの2つを明確に区別せず一括して処理されています。

どのくらいの金額の慰謝料が認められるのでしょう。
東京地方裁判所判例による統計は次のとおりです。

 100万円以下 208件(28.2%)
 200万円以下 196件(26.6%)
 300万円以下 183件(24.8%)
 400万円以下 53件(7.2%)
 500万円以下 60件(8.1%)
 500万円超え 37件(5.0%)


これを見ると慰謝料300万円以下がほとんど(約8割)です。
※東京家庭裁判所家事第6部編「東京家庭裁判所における人事訴訟の審理の実情(第3版)」判例タイムズ社20131、87頁 より


慰謝料の額は、婚姻破綻に関する双方の有責性の程度、婚姻期間、当事者の年齢、未成年の子の有無、経済状態、財産分与による経済的充足があるか、離婚に至る一切の経過等を考慮して判断されますが、離婚に至る経過は千差万別ですので「客観的な基準はない」と言われています。

とはいえ傾向としては、次のようなことがいえます。
〕責性が高いほど高い。
∪鎖静苦痛や肉体的苦痛が激しいほど高い。
婚姻期間が長く、年齢が高いほど高い。
ぬだ年の子がいる方が,いない場合よりも高い。
ネ責配偶者に資力があり、社会的地位が高いほど高い。
μ祇佞稜朸者の資力がないほど高い。
Ш盪妻与による経済的充足がある場合に低い。

ここで慰謝料に関して、(私が特徴があると感じた)判例を紹介します。
皆さんはどう思いますか?

●夫婦双方に有責性があるが,妻が夫の職場に対して非難の電話、訪問等をした行為が異様の感を与えるほど執拗、激越であったため、妻の責任が若干重いとして妻に慰謝料100万円の支払を命じた。(東京高判昭58・9・8判時1095号106頁)

これは、双方に有責性があったケースで、妻の行き過ぎた行動により妻側に慰謝料が課せられた判例です。

●妻が夫の不貞を疑い、夫はこれに腹を立てて暴力をふるったため、婚姻後4ヵ月で別居して10年経過した事案。
裁判官は、「困難を克服して夫婦生活を築くべき婚姻生活の当初にその努力を放棄した一半の責任は妻にも存」するとして、妻の請求の慰謝料を減額して、夫には慰謝料30万円の支払を命じた。ほかに財産分与10万円あり。(東京高判昭50・6・26家月28巻4号85頁)

これは、請求する側が婚姻の継続の努力を怠ったとして、慰謝料は減額された判例です。

●夫が妻の不貞行為を理由に妻に慰謝料を請求したのに対して、妻から、夫は他の女性と不貞関係にあり、風俗店の利用など不適切な性交をしており、「夫の請求は信義則に反する」と主張した事案。
裁判では、夫の不貞行為については証明されていないこと、風俗店の利用等が夫婦間で特段問題とされた形跡がうかがわれないことから、妻の主張は排斥されました。
ただし破綻原因が妻側の不貞行為のみであると認めることには疑問があるとして、夫の440万円の慰謝料請求に対して150万円の支払を認容した。(東京地判平25・3・22末公表[LEX/DB 25512056〕)。

これは、慰謝料請求された被告側(妻)も原告(夫)の不貞行為を問題にする場合があるとして、原告(夫)の慰謝料が減額された判例です。

●妻が婚姻当初から別居まで、男性に触れられると気持ちが悪いといい性交を拒否した結果、けんかが絶えず破綻した事案。
妻が精神的な面で性交に耐えられないと医師から診断されているが、妻に慰謝料150万円の支払を命じた。(岡山地津山支判平3・3・29判時1410号100頁)

性交の拒否については、拒否につき正当な理由がなく、それが原因で婚姻が破綻した場合には慰謝料が認められています。

●仮に夫が妻との性交中に離婚を求めたり、長男の入院先の病室へ離婚届用紙等を持参したりしたとしても、それらをもって不法行為を構成するほどの違法性のある行為とは評価できないとして、妻からの慰謝料的財産分与の請求を否定した。(名古屋高決平18・5・31家月59巻2号134頁)

これは夫の行為に違法性がないとして妻の慰謝料請求を求めなかった判例です。


離婚の裁判や調停において、夫婦が双方で非難応酬を繰り返すと、長時間、不安やストレス、時には健康への被害を受けることがあります。
請求する側に全く非がないということは、ほとんどの事案ではありえないといわれています。被害を受けたと思っている自分が、相手より人格攻撃されてより傷ついてしまう、ということもしばしば起こります。
また、未成熟の子がいる離婚の場合には、長引く紛争で、子の面会交流や養育費の履行に影響し、それが子の利益を害することも少なくありません。


裁判の結果が、披った苦痛の程度に十分に応じたものになっているのかどうかは一概に判断できません。
第三者に判断してもらわないと決着しないケースでは裁判も避けられません。

3組に1組が離婚する時代です。
離婚慰謝料の金額は漸減傾向にあるようです。
判例も時代背景を受けて変わっていくことでしょう。

 
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行政書士萩本勝紀

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