更新料を有効とする判決

  • 2011.07.24 Sunday
  • 00:06

賃貸住宅の契約更新時に支払う「更新料」を定めた契約は有効か無効か

が争われた訴訟で、平成23715日最高裁(第2小法廷、古田祐紀裁判長)は、「高額すぎるなど特別な事情がない限り有効」との判断を示しました。そして更新料の返還を求めた借り手の請求を棄却しました。

今回の訴訟は、京都府や滋賀県の3人の賃借人が提訴し、高裁判決では「無効」2件、「有効」1件と判断が割れていましたが、最高裁判決により「更新料は有効」との司法判断が確定したものです。

同小法廷は、更新料の性格を「賃料の補充や前払い、契約継続の対価などの趣旨を含む複合的なもの」と改めて定義。「経済的合理性がないとはいえない」と判断し、地域によって更新料が商慣習としてあることは広く知られており、「借り手と家主との間に看過できない情報格差はない」としました。

そして、契約の際、更新料が賃貸借契約書に明示されており、特段の事情がない限り「消費者利益を一方的に害するとはいえない」と指摘。消費者契約法の第10条が無効と定めている「信義則に反して消費者の利益を一方的に侵害する契約」にはあたらないと結論づけました。


これは、当事者間で合意すれば契約内容は自由という「契約自由の原則」を重視し、商慣習への安易な介入に慎重な姿勢を示したものといえます。

更新料は有効との判決が出たことで、貸し主による便乗値上げの可能性を指摘する声も出ていますが、その一方、不動産業界、貸し主ともに、更新料は消える方向だという状況もみえます。賃貸住宅市場は「買い手市場」で、ごく一部の人気物件を除けば更新料を増額できるような状態ではないからです。

貸し主側としては、これによって更新料という仕組みが守られた、と安堵する人もいるようですが、逆に「合意するまでは交渉次第」ということに最高裁がお墨付きを与えたようなものでもあり、今後は、借り手からの交渉が増えたり、「更新料なし」でアピールする物件もより増えてくると思われ、つまり、すべては今まで通りではないととらえておくのがよいと感じます。

判決文はコチラ

敷引特約を有効とする判決

  • 2011.07.18 Monday
  • 00:08

今年になり、敷金返還請求において影響を与える最高裁判決が出ています。

それは「敷引特約」を有効とする判決です。

敷引特約とは

主に関西地方を中心に、賃貸住宅の貸主が原状回復費などとして敷金から一定額を引き去るという契約条項をいいます。

これまで、敷引特約は消費者への過重な負担を課すとして、消費者契約法に照らし、特約を無効であるとして敷金返還を主張してきました。

それでは、3月と7月の判決概要を見てみましょう。

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平成23324日最高裁判所第一小法廷(金築誠志裁判長)

敷金40万円、家賃月額96000円、敷引き21万円

判決では「本件は、通常損耗等の補修費用を負担させる特約で、消費者の義務を加重するものだが、補修の要否や費用を巡る紛争を防ぐ意味で不合理とは言えず、修繕費や賃料に比べ、差し引く額が高過ぎる場合には無効となるが、本件については賃料の23.5倍にとどまり、無効とは言えない」とし、原告(借主)の上告を棄却した。


平成23712日最高裁判所第三小法廷(田原睦夫裁判長)

家賃月額175000円(更新後17万円)、敷引き60万円

今回の判決も「敷引金は賃料の3.5倍程度にとどまり、高額に過ぎるとは言い難い」と結論付けた。

ただ、裁判官の一人(岡部喜代子裁判官)は「敷引金の具体的内容が明示されておらず、3.5倍の負担も決して軽くない」として反対意見を付けた。

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今回の判決で改めて感じるのは契約(合意)の重要さです。

賃貸借契約に敷引特約が記載され、敷引金の額についても契約書に明示されている場合には、借主は、賃料の額に加え、敷引金の額についても明確に認識した上で契約を締結しているわけであり、借主の負担については明確に合意されている。

通常損耗等の補修費用は、賃料にこれを含ませてその回収が図られているのが通常だとしても、これに敷引金として充てる旨の合意が成立している場合には、その反面において、上記補修費用が含まれないものとして賃料の額が合意されているとみるのが相当であって、敷引特約によって借主が上記補修費用を二重に負担するということではない。  

そして  

上記補修費用に充てるために貸主が取得する金員(敷引き)を具体的な一定の額とすることは、通常損耗等の補修の要否やその費用の額をめぐる紛争を防止するといった観点から、あながち不合理なものとはいえず、敷引特約が信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するものであると直ちにいうことはできない。  

というのが、敷引特約を有効とした根拠です。

ただ、このような特約が常に有効なわけではなく、無効になりうる場合も示唆しています。

つまり、敷引特約や通常損耗を借主負担とする特約について、それを一律に有効・無効の判断をするわけではなく、個別の契約条件によって判断する、とししている点は留意するべきでしょう。

「更新料」は有効? についても最高裁判決が出ましたので、次回のブログでお知らせします。

[判例紹介]マンションでのトラブル

  • 2008.08.25 Monday
  • 17:48

最初の分譲型の共同住宅ができたのは、昭和26年、東京都が造った渋谷区の「宮益坂アパート」であるとされています。

民間で初めての分譲マンション(会社社宅として)は、昭和30年、川崎の小杉町に建設されました。

一般個人向けの分譲マンションとしては、昭和311月、「四谷コーポラス」が最初です。

多くの人が共同で暮らすマンションでは紛争・トラブルがつきものです。

 

日常発生するトラブルの判例をいくつかご紹介します。

東京地方裁判所判決(平成31119日)
ベランダ・バルコニーは避難通路としての機能を共用部分性の根拠とする考えから、これを妨げるような物置の設置、温室化、居室化は許されない。
物干場とすることは、避難通路としての機能を害しない範囲ではやむを得ない。

東京地方裁判所判決(昭和61925日)
美観の理由から規約違反の大型看板撤去が認められた。

東京地方裁判所判決(平成31226日)
衛星放送受信アンテナは、共同アンテナがあり、個別のアンテナ設置が規約で禁止されている場合には、バルコニーの通常の使用方法ではない(ことがある)。

東京地方裁判所判決(平成71121日)
専有部分で野鳩に餌付けをして飼育。
汚損・悪臭・騒音による共同生活上の障害が著しい。
使用貸借の解除、管理組合への建物引渡し、不法行為に基づく損害賠償が認められた。

横浜地方裁判所判決(平成31212日)、東京高等裁判所判決(平成684日)
ペット飼育禁止規定は、その目的、現在の社会情勢からみて合理的である。

東京地方裁判所判決(平成6331日)、東京地方裁判所判決(平成875日)
規約等にペット禁止規定があれば、原則として「区分所有者の共同の利益に反する行為」にあたる。 *最高裁判決でも同じ(平成10326日)

福岡地方裁判所判決(昭和60521日)
マンション入居者の引越し荷物の積み降ろし作業に伴う騒音で精神的苦痛を味わったとして、管理組合に、管理費の減額と慰謝料90万円を請求。
社会生活上、受任すべき範囲を超えていないとして、請求を認めず。

東京地方裁判所判決(平成31121日)
マンション階下の居住者が、床をフローリングにした階上の居住者に対し、それによって生じる騒音を理由に、床を畳等に変更すること、変更までフローリング床の使用禁止および慰謝料218万円を求めた。
受任限度の範囲内として、請求を認めず。

東京地方裁判所判決(平成4113日)
マンション1階のカラオケスタジオ騒音訴訟。
夜間の一定時間帯の使用禁止が認められた。

東京地方裁判所判決(平成659日)
フローリング床に変えたことによる騒音訴訟。
階下の居住人より、不眠症、ストレスによる顔面神経麻痺、転居、売却を余儀なくされたと損害賠償を請求。
受任限度の範囲内として、請求を認めず。

東京地方裁判所八王子支部判決(平成8730日)
ジュウタンからフローリング床に変えたことにより、騒音が4倍になったとする騒音訴訟。
フローリング床の撤去、復旧工事は、「差し止め請求をするほどの違法性はない」として認めないが、「受忍限度を超え不法行為を構成する」として金75万円の支払を認めた。

東京地方裁判所八王子支部判決(平成91015日)
住戸内の改装工事騒音訴訟。
受任限度を超えるとして工事業者と設計監理した一級建築士に賠償責任が認められた。工事依頼者の責任は否定された。

東京地方裁判所判決(平成10123日)
フローリング床に変えたことによる騒音訴訟。
受任限度の範囲内として、請求を認めず。
逆に、階下の居住者の抗議行動(3年間に渡って繰り返された3分から1時間に及ぶ天井を叩く行為、深夜・早朝での抗議電話をかける行為、19回パトカーを呼ぶ行為)が、暴力行為に匹敵する違法行為にあたるとして、階下の居住者に対して金200万円の損害賠償を命じた。

東京地方裁判所判決(平成4319日)
ベランダの排水口の管理の不備が原因で、階下の部屋に漏水。
階上の所有者及び居住者に工作物責任を認めた。

福岡高等裁判所判決(平成121227日)
屋上排水のゴミ詰まりによる漏水。
管理組合への責任を認めた。

判例を見ていると、だいたいが一定の結論となっています。

騒音訴訟については、階上の騒音で心労した階下の住人に、私は同情的です。私自身も一人暮らしの頃は、悩まされた側です。

(故意でなくとも)騒音を起こしている居住者は、階下・隣・階上などの居住者への挨拶やお詫びなどのコミュニケーションで、訴訟にまで至らないケースがほとんどだと思います。

マンションのトラブルケースでも内容証明郵便は使われています。 

お悩みの方あれば、弊所にご連絡ください。

[判例紹介]敷金返還請求

  • 2008.08.20 Wednesday
  • 00:27

敷金返還トラブルは弊所へのご相談が多い事案の一つです。原状回復費用、クリーニング費用、敷引きについて賃貸人(不動産屋さんor大家さん)と賃借人(借主)で争われます。

いくつか近年の判例(簡単な要旨)をご紹介します。

下記すべて、借主の負担が否定され、敷金の返還が認められています。
関西地方が多いのは、やはり関西特有の敷金の考え方や敷引特約といった、慣習・慣行の違いによるものです。


<判例>

東大阪簡易裁判所判決(平成15114日)

敷金返還請求。

賃貸人からの原状回復請求については、経年変化および通常使用によって生ずる減価の範囲内であるとし、賃借人の敷金返還請求を認めた。

東京高等裁判所判決(平成15325日)

賃貸人からの原状回復請求。
経年または通常の使用による損耗については、特約がない限り、これを賃借人が引渡しを受けた時点の状態にまで復して返還する義務を負うものではないとした。

賃貸借契約書には次のような条項があったが、上記のとおり判決。
1.本契約を終了した時は、乙(賃借人)は賃借室を甲(賃貸人)の指定工事業者により原状回復し、甲に無条件に明け渡す。
2.次の費用は乙の負担とする。
入居期間中及び契約終了時の障子、襖、畳、クロス、ジュウタン、クッションフロアー等の張り替え、電球、塗装、建具等の修繕、ハウスクリーニング、契約終了時の鍵の取替え。
3.原状回復による修理実費は、敷金から差し引くものとする。
4.乙は故意又は過失により建物及び諸施設を破損、滅失せしめた時、直ちに甲に報告し、甲の指示に従ってこれを修復し、その損害を補填しなければならない。

東大阪簡易裁判所判決(平成15520日)

敷金返還請求。
賃貸人が主張する原状回復は経年変化ないし通常使用による減価の範囲にとどまるから、これを敷金から控除することを認めず。賃借人が経年変化や通常使用による損耗分を含めて原状回復費用をすべて負担することに同意した事実も認められない(負担することを認めたという証拠がない)。

大阪地方裁判所判決(平成15630日)

敷金返還請求および支払済みの原状回復費用について不当利得返還を請求。
賃借人の債務不履行とはいえない自然減耗を賃借人の負担とする特約について、民法90条により無効とした。

大阪簡易裁判所判決(平成151016日) *少額訴訟

敷金返還請求。敷引特約。
賃貸借契約終了時に、保証金40万円から30万円を差し引いて返還するとの敷引特約について、入居期間の長短にかかわらず一律に75%もの敷引きを行なうことは当事者間の審議衛平に照らし妥当ではなく、消費者契約法10条に反し無効であるとした。


大阪地方裁判所判決(平成18228日)

敷金返還請求。敷引特約。
敷引特約(保証金60万円に対し敷引金が50万円という特約)について、消費者契約法10条の消費者の義務を加重する消費者契約法の条項に該当し、消費者の利益を一方的に害するものとして無効とした。

大阪高等裁判所判決(平成18524日)

敷金返還請求。
賃借人の責任の有無にかかわらず、また、居住年月日の長短にも関係なく、解約時には当然に修繕費用を敷金から差し引く旨の特約がある事案において、かかる特約を無効とした。

大津地方裁判所判決(平成18628日)

敷金返還請求。敷引特約。
消費者契約法10条により敷引特約は無効とした。

事業者の側が、消費者が当該特約条項により負担する給付が、実際は、消費者が法的に負担すべき義務の対価たる性格を有することに加え、契約締結時までに事業者から消費者にの情報が提供されることにより、消費者が契約締結後になって初めて契約締結時に予定していたよりも不利益な状態に陥ったことを立証しない限り、消費者契約法10条により無効とする。

大阪高等裁判所判決(平成18726日)

敷金返還請求。敷引特約。
敷引特約について、消費者契約法10条により無効とした。

それでは、このようなトラブルを引き起こさないためにどうすべきでしょうか。


■貸す側は

賃貸借契約での、敷金に関する特約、敷引き、原状復帰、ハウスクリーニングなどの条項を、充分時間をかけて説明し、賃貸借契約への署名押印だけではなく、別途覚え書などを交わすことだと考えます。それも、とりあえず行なうといった単なる説明だけではなく、トラブル事例などを伝え、しっかりと借りる側が理解して初めて、契約に至るように努めるべきです。
上記判例(大津地方裁判所判決(平成18年6月28日))では、それら特約を消費者が理解していたかの立証が無い限り、敷引特約は無効としています。


■借りる側は


少しでも気になる点があれば、契約の時点でそれを主張しましょう。相手が受け入れてくれなければ、「気に入った物件でも止める」という決断をすることです。後々、お互いが面倒になります。

契約書はじっくり読む期間をもらって、理解した上で署名・押印をしましょう。

また、入居の際と明け渡しの際は、できるだけ写真を撮っておくことです。

明け渡しの現状確認の際は、必ず立会うことです。後になって、どうこうと言われないためです。

賃貸借契約書は、破棄、返却をせず、必ず保管しておく必要があります。数ヶ月も経ってから、原状復帰工事の請求書などが届く場合があります。


契約時、入居時、退去後トラブルになってしまった時などは、専門家に相談しましょう。

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行政書士萩本勝紀

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