M&Aのデューデリジェンスについて

  • 2010.08.31 Tuesday
  • 14:51

事業承継をやっているとM&Aについて知っておく必要があります。

そこで今回は企業活動の中でのM&A(合併・買収)について書いてみます。

M&Aを何故やりたいか」を考えるとき、水平統合と垂直統合という理由に留意します。

水平統合とは

同じ業界の競争相手を買収して規模を大きくする統合です。より規模を拡大して業界の競争相手を減らす動きです。

水平統合することで、共通の原材料や部品、共通の商品、支店・営業所・店舗などの販売ネットワーク、仕入先・販売先、ITシステムやITネットワーク、間接部門などの共通する機能やコストが整理削減できます。

コストが下がるとより安い価格を提供し、マーケットシェアを拡大する、というものです。業界内での水平統合は、また新たな競争相手の統合を招き、業界は再編していくということになります。例えば、銀行や証券会社、大手スーパーやデパート、家電や製薬業界があります。

もう一方の垂直統合ですが、

これは、原材料や部品などの調達研究開発製造生産販売サービスといったそれぞれの部分活動を行う企業同士、いわゆる川上(供給業者)から川下(販売流通業者)に向かっていく一連の流れの中で、企業買収をするというものです。

思い通りに原材料や部品を供給しない供給業者を買収することで、サプライチェーンマネジメントを強化したり、また流通業者を買収して顧客情報を収集分析することで、より広い付加価値をつけてサプライチェーンマネジメントを強化する、というような動きです。例としては、自動車メーカーが部品会社を買収する場合などがあります。

製品は持っているが販路開拓に弱い(あるいは販路が少ない)事業会社が、流通網を持つ会社を買収したり、流通網は強いが製品力が弱い会社が、研究開発の強い会社を買収するようなケースがあります。

ただ垂直統合は水平統合よりは難しいものです。

というのも、自分がやっていない業務の会社を買収しますので、買ってから期待どおりの結果を出せるか難しいからです。結果というのは、最終的に顧客価値が高められるかということです。

例えば、製造期間、適正な在庫数量、流通スピード、販売や各種サービスなどの向上です。買収に失敗すれば、逆に自社の製品の競争力を失うことにもなりかねません。

従って、M&A「デューデリジェンス」、つまり買収前の相手企業調査は非常に重要です。

事業承継におけるM&Aは、上記のような買収とは若干意味合いが異なりますが、デューデリジェンスが重要であることは言うまでもありません。

ただしデューデリジェンスに長い期間をかければいいというものでもありませんので、高度な専門性が問われる業務なのです。

事業承継 株式の相続について

  • 2010.06.09 Wednesday
  • 14:29

今回は中小オーナー会社での、株式の相続についてお話しします。
事例でみていきましょう。

経営者である父Aの会社の発行済株式 1000

父A所有   500
長男C所有 400
母B所有   50
長女D所有 50

経営者の父Aは、長男Cに会社を承継するつもりであった、とします。
しかしAは何の相続対策もせずに亡くなってしまった。

とします。

相続財産は共有となります(民法898条)

従って、
遺言でAの株式500株を長男Cに相続させると定めない限り、父Aの株式500株は、母B、長男C、長女Dの共有となります。

この共有という考え方ですが、

法定相続分の割合で分割され

母Bは250株(2分の1)
長男Cは125株(4分の1)
長女Dは125株(4分の1)

をそれぞれ相続する。

となるのではありません!!

これは

母Bは2分の1、長男Cは4分の1、長女Dは4分の1

という割合で500株を共有する

となります。

この二つは全く違うことなのです

「共有株式の株主総会での議決権行使の方法は、共有持分による多数決で決する」という最高裁判決があります。

この会社の株主総会での決議を考えてみましょう。

母Bと長女Dが結託すれば500株は全て2人の自由に行使することが可能になります。
最初からBとDが持つ100株を加えると合計600株となります。

そうすると、例えば

母Bと長女Dは、父Aの意向や長男Cの承継に係わらず、会社を支配できます。
またCを廃除することもできてしまいます

「身内なんだからそれははないだろう」っていうのは甘いです。

例えば長男Cが父Aと前妻との子で、後妻Bや生まれた長女Dとうまくいっていなかったらどうでしょう。

あるいは、長女Dが自分の夫Eに会社をやらせたくて、性格が合わない長男Cを辞めさせるべく、母Bとタッグを組んだらどうなるでしょう。

「まだ自分は元気だから」と言って、何の相続対策もせずに放置しておくこと、どんでん返しをくらうことになりかねません。

事業承継は、経営、相続、財産、法律、税務、人の心裡などが複雑に絡む、とても重要なことなのです。

事業承継 連帯保証債務の相続について

  • 2010.05.27 Thursday
  • 14:26

連帯保証債務の相続について考えましょう。

経営者である父親Aが、銀行から借りた3000万円の連帯保証人となっていたとします。相続人は、妻B、長男C、長女Dの3人。

Aの銀行に対する3000万円の連帯保証債務は、

法定相続分に従うと、


B
1500万円、CDがそれぞれ750万円ずつ相続します。
各自はその相続分の限度で会社を連帯保証することになります。
それぞれが3000万円の連帯保証人の地位を引き継ぐわけではありません。

債務は当然に分割して承継されるからです。

ところで、もしAが遺言で、これと異なる配分を決めたらどうなるでしょう。
また、BCDが遺産分割協議で話し合って、これと違う配分を決めたらどうなるでしょう。

 債務については遺言や遺産分割の対象にはなりません。

遺言や遺産分割で決めたことを、債権者である銀行に主張することはできません。

というのも

例えばBには資産があるのに、BCDが話し合って支払い能力の無いDに債務を集中させるしたら、銀行はお金を回収できなくなってしまいます。連帯保証を取っていた意味もなくなってしまいます。

相続に限ったことではありませんが、債務の引受には債権者の承諾が必要とされています。

そうしないと上記のように、債務者が勝手に債務を移転してしまい、債権者は思いもよらない被害を受けてしまうからです。
もちろん、債権者(この場合は銀行)と合意ができれば、法定相続分と異なる取り決めをすることは可能です。銀行としても様々な相続人に債務が分散されてしまうのは得策ではないからです。

しかし現実的には厳しいでしょう。銀行にとってより良い話=お金の回収可能性が強まるような話、を持ち出さないと無理でしょう。
上記例で言えば、資産のあるBが連帯保証債務をすべて引き受け、C・Dは連帯保証債務を免除する、といったような提案です。

とくに経営者を同族の後継者が相続する(事業承継)には、いろいろな手を考え計画し、実行する必要があります。

専門家をうまく活用しましょう。

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行政書士萩本勝紀

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