離婚の慰謝料

  • 2016.06.05 Sunday
  • 11:10

今回は、離婚による慰謝料についてまとめました。

裁判で言う離婚の慰謝料には、離婚原因となった個別の有責行為(例えば暴力・不貞・悪意の遺棄など)から生じる精神的苦痛の慰謝料(離婚原因に基づく慰謝料)と、離婚そのものによる精神的苦痛の慰謝料(離婚自体慰謝料)があるとされています。多くはこの2つを明確に区別せず一括して処理されています。

どのくらいの金額の慰謝料が認められるのでしょう。
東京地方裁判所判例による統計は次のとおりです。

 100万円以下 208件(28.2%)
 200万円以下 196件(26.6%)
 300万円以下 183件(24.8%)
 400万円以下 53件(7.2%)
 500万円以下 60件(8.1%)
 500万円超え 37件(5.0%)


これを見ると慰謝料300万円以下がほとんど(約8割)です。
※東京家庭裁判所家事第6部編「東京家庭裁判所における人事訴訟の審理の実情(第3版)」判例タイムズ社20131、87頁 より


慰謝料の額は、婚姻破綻に関する双方の有責性の程度、婚姻期間、当事者の年齢、未成年の子の有無、経済状態、財産分与による経済的充足があるか、離婚に至る一切の経過等を考慮して判断されますが、離婚に至る経過は千差万別ですので「客観的な基準はない」と言われています。

とはいえ傾向としては、次のようなことがいえます。
〕責性が高いほど高い。
∪鎖静苦痛や肉体的苦痛が激しいほど高い。
婚姻期間が長く、年齢が高いほど高い。
ぬだ年の子がいる方が,いない場合よりも高い。
ネ責配偶者に資力があり、社会的地位が高いほど高い。
μ祇佞稜朸者の資力がないほど高い。
Ш盪妻与による経済的充足がある場合に低い。

ここで慰謝料に関して、(私が特徴があると感じた)判例を紹介します。
皆さんはどう思いますか?

●夫婦双方に有責性があるが,妻が夫の職場に対して非難の電話、訪問等をした行為が異様の感を与えるほど執拗、激越であったため、妻の責任が若干重いとして妻に慰謝料100万円の支払を命じた。(東京高判昭58・9・8判時1095号106頁)

これは、双方に有責性があったケースで、妻の行き過ぎた行動により妻側に慰謝料が課せられた判例です。

●妻が夫の不貞を疑い、夫はこれに腹を立てて暴力をふるったため、婚姻後4ヵ月で別居して10年経過した事案。
裁判官は、「困難を克服して夫婦生活を築くべき婚姻生活の当初にその努力を放棄した一半の責任は妻にも存」するとして、妻の請求の慰謝料を減額して、夫には慰謝料30万円の支払を命じた。ほかに財産分与10万円あり。(東京高判昭50・6・26家月28巻4号85頁)

これは、請求する側が婚姻の継続の努力を怠ったとして、慰謝料は減額された判例です。

●夫が妻の不貞行為を理由に妻に慰謝料を請求したのに対して、妻から、夫は他の女性と不貞関係にあり、風俗店の利用など不適切な性交をしており、「夫の請求は信義則に反する」と主張した事案。
裁判では、夫の不貞行為については証明されていないこと、風俗店の利用等が夫婦間で特段問題とされた形跡がうかがわれないことから、妻の主張は排斥されました。
ただし破綻原因が妻側の不貞行為のみであると認めることには疑問があるとして、夫の440万円の慰謝料請求に対して150万円の支払を認容した。(東京地判平25・3・22末公表[LEX/DB 25512056〕)。

これは、慰謝料請求された被告側(妻)も原告(夫)の不貞行為を問題にする場合があるとして、原告(夫)の慰謝料が減額された判例です。

●妻が婚姻当初から別居まで、男性に触れられると気持ちが悪いといい性交を拒否した結果、けんかが絶えず破綻した事案。
妻が精神的な面で性交に耐えられないと医師から診断されているが、妻に慰謝料150万円の支払を命じた。(岡山地津山支判平3・3・29判時1410号100頁)

性交の拒否については、拒否につき正当な理由がなく、それが原因で婚姻が破綻した場合には慰謝料が認められています。

●仮に夫が妻との性交中に離婚を求めたり、長男の入院先の病室へ離婚届用紙等を持参したりしたとしても、それらをもって不法行為を構成するほどの違法性のある行為とは評価できないとして、妻からの慰謝料的財産分与の請求を否定した。(名古屋高決平18・5・31家月59巻2号134頁)

これは夫の行為に違法性がないとして妻の慰謝料請求を求めなかった判例です。


離婚の裁判や調停において、夫婦が双方で非難応酬を繰り返すと、長時間、不安やストレス、時には健康への被害を受けることがあります。
請求する側に全く非がないということは、ほとんどの事案ではありえないといわれています。被害を受けたと思っている自分が、相手より人格攻撃されてより傷ついてしまう、ということもしばしば起こります。
また、未成熟の子がいる離婚の場合には、長引く紛争で、子の面会交流や養育費の履行に影響し、それが子の利益を害することも少なくありません。


裁判の結果が、披った苦痛の程度に十分に応じたものになっているのかどうかは一概に判断できません。
第三者に判断してもらわないと決着しないケースでは裁判も避けられません。

3組に1組が離婚する時代です。
離婚慰謝料の金額は漸減傾向にあるようです。
判例も時代背景を受けて変わっていくことでしょう。

 

[判例紹介]面接交渉

  • 2008.08.29 Friday
  • 18:33

離婚にあたり、別居した親(非親権者や非監護親)が、子と会ったり、手紙や電話などで交流することを「面接交渉」とか「面接交流」といいます。

「面接交渉」は、

子の心身状態
監護状況
子の意思
年齢
監護教育に及ぼす影響
父母それぞれの意思
葛藤や緊張の程度
面接において父母の相互の協力が可能であるか
別居親からの距離

などから総合的に判断されます。

判例を一つ紹介します。

【子が面接を拒否しているが、面接交渉を認めた事例】
(岡山家庭裁判所平成2123日判決)

[事実経過]
夫婦は昭和551980)年に婚姻。
男子A(審判時9歳)、女子B(同8歳)をもうける。
A
の出産直後から、祖母(夫の養母)がAの養育に口出し。
妻と祖母のAの養育をめぐる対立が激化。
夫は祖母に同調、夫婦関係は悪化。

別居、離婚調停。
A
Bは、父、祖父母と同居。

A
はアレルギー体質であったが、祖母から、アレルギーになったのは、母から腐った卵を食べさせられたから、とか、祖母も母から毒を飲まされたなどを聞き、母に強い反感を持つようになる。
A
は祖母を慕い、母に会いたくもなく、父や祖母との生活を望む。
B
は信頼する兄Aに同調。

母は、自分をABの監護者定め、子どもを引き渡す審判を申立てた。

[判旨]
母への監護者指定と引渡しは認めず。
子らに大きな動揺を与え混乱をもたらすため。

ただし、
「申立ての趣旨に拘束されることなく、子の福祉のために最も望ましい内容」ということで、

ABと母の面接交渉を実施し、意志の疎通を図り、母親との心的な信頼関係を回復することが不可欠である」とした。

具体的には、父に対し、母との別居解消または離婚成立に至るまで、
「夏季休暇期間中の7日間、春期休暇・冬季休暇期間中の3日間、母の住所地に宿泊させよ」と命じた。
また、父及び祖母に対し、ABに対し母を敵視するような言動をしてはならない、ABの母に対する誤解をとかせていくことなど、その態度を戒めた。

[コメント]

母親が、誰が見てもズサンな養育をしていない限り、および母親から頼まれたのでない限り、婚姻相手の親や祖母が、子の養育をめぐって、口を挟んではいけません。

上記裁判の子らは、その後、どう成長していったか分かりませんが、小学校低学年であった2人が、母親とも信頼関係を回復できていることを願います。

「青い鳥」判決

  • 2008.08.10 Sunday
  • 00:48
 

熟年夫婦、モラハラ・暴力夫に対する妻からの離婚請求事例】
(名古屋地裁平成
3320日判決)

この判決は、その後 「青い鳥」判決 と呼ばれ、多くの人から非難されています。

[妻(原告)の主張]

夫は何事も自分本位で、自分の都合に合わせて事実を曲げてとらえ、人に対する思いやりとか優しさを持ち合わせていない。
妻が病気で寝ていると、夫は心配するどころか「楽をしている」とののしる。自分の思い通りにならなければ、それをすべて周りの人のせいにして口汚くののしる。
暴力はしばしば。その暴力はかなり執拗なもので、妻が気を失って倒れるまで殴りつけ、それに水をぶっかけるようなものだった。
長男に対しても、長男が意見を言っただけで、その指に噛み付き、血が出るまで振り回す。
妻は、妊娠8ヵ月の身体で睡眠薬を多量に飲んで自殺を図るほど追い詰められる。
結婚以来30年近くにわたり、妻子の人格を無視。執拗な暴力。些細なことにいちいち文句をつけ、しつこく追及し続けることは一種の拷問である。

[夫(被告)の主張]

妻の主張のほとんどを否定。
妻が充分に夫の世話や家業の手伝いをしない、自分こそが身勝手な妻の被害者だと主張。
離婚には絶対反対、妻には帰ってきて欲しいと懇願。

[判決]  』内は判決文そのまま

『現在原告(妻)と被告(夫)との婚姻関係はこれを継続することが困難な事情にあるが、なお被告(夫)は本件離婚に反対しており、原告(妻)に帰ってきてほしい旨懇願しているのであって……(中略)……、被告(夫)が前記反省すべき点を十分反省すれば、いまなお原告(妻)との婚姻生活の継続は可能と考えられるから、原告(妻)と被告(夫)、ことに被告(夫)に対しての最後の機会を与え、二人して何処を探しても見つからなかった青い鳥を身近に探すべく、じっくり腰を据えて真剣に気長に話し合うよう、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認める。』

『訴訟継続中、ひとかどの身代を真面目に作り挙げた被告(夫)が法廷の片隅で一人孤独に寂しそうにことの成り行きを見守って傍聴している姿は憐れでならない』

夫が述べた『妻が充分に夫の世話や家業の手伝いをしない』の不満に、妻は『耳を傾けるべきである』


[萩本コメント]

裁判官は、妻の主張事実は大方認め、夫にはその態度や考え方を反省すべきと指摘しながらも、夫のモラハラ、執拗な暴力を適切に評価せず、加害者である夫の弁解に相当な共感を示し、かつ夫に大いなる同情を寄せた。
言葉や身体の暴力を受け続けた妻の痛みに対する、いたわりや共感は全く示されなかった。

このような判決は実はこれだけではありません。
裁判官もいろいろ。
こんな意識を持つ裁判官はまだまだいるのです。
皆さんはどう感じますか。


 

[判例紹介]性交渉拒否・性交不能

  • 2008.08.04 Monday
  • 00:46
 

今日は、「性交渉拒否」「性交不能」による離婚判例をいくつかご紹介します。

「性交渉拒否」「性交不能」が民法でいう「離婚の5号原因」に該当することには、判例・学説共に争いはありません。

(第770条第1項第5号=>婚姻を継続し難い重大な事由)

「性交渉拒否」「性交不能」が原因で婚姻が破綻した場合にも、慰謝料が認められるケースがあります。

<判例>


最高裁判決(昭和3726日)
夫は交際期間中に副睾丸結核のため睾丸を切除。

生殖能力は無いが夫婦生活には影響ないとの医師の診断。

しかし。1年半の同居期間中、性交渉は不能。

妻の離婚請求を認めた。

名古屋地裁判決(昭和47229日)
結婚当初4ケ月は性交渉があったが、その後夫は性交渉を拒否。

夫は他の男性と同棲愛に。

5号事由にあたり、妻の離婚請求は認められた。

浦和地裁判決(昭和60910日)
夫はポルノ雑誌やポルノビデオに異常な関心を示して自慰行為だけにしたり、妻が性交渉を求めるが拒否。

慰謝料500万円が認められた。

横浜地裁判決(昭和61106日)
夫は新婚旅行中から妻の体にいっさい触れようとせず、性交渉が皆無。

新婚一カ月半で妻は肉体的・精神的に疲れ切って実家に戻った。

慰謝料100万円が認められた。

京都地裁判決(昭和62512日)
夫は性的興奮や衝動がなく、婚姻に際して性的不能を告げておらず、同居期間3年半で性交渉無し。

告知しなかったことは信義則違反にあたり、離婚が認められた。

京都地裁判決(平成2614日)
夫が性交渉に無関心。

性交渉の無いまま婚姻して一カ月足らずで別居、離婚。

妻は結婚費用に450万円費消していたことから、慰謝料500万円が認められた。

岡山地裁津山支部判決(平成3329日)
妻は男性に触られると気持ちが悪いと言い、婚姻当初から性交渉を拒否。

妻は精神的な面から性交渉に耐えられないと医師は診断。

夫への慰謝料150万円が認められた。

(妻は婚姻前から知っていたにも係わらず告げていなかった)


近年のストレス社会では、性交渉の回数が減少しても(いわゆるセックスレスは)驚くものではありません。

回数の減少が、単純に愛情の喪失を意味するものでもありません。

夫婦の結婚生活は、人それぞれで「一律にこうだ」というものではありません。
特に夫婦間の性関係は、他人の基準で測るべきものではありません。

性交渉が無い(無くなった)としても、夫婦間の双方で、”一応の”、“しぶしぶの”、“暗黙の”、納得が得られていれば問題はないのです。
 

[判例紹介]慰謝料「嫁いびり」

  • 2008.08.02 Saturday
  • 00:44
 

いわゆる「嫁いびり」の慰謝料をいくつかご紹介します。

名古屋地裁一宮支部判決(昭和53526日)
同居の姑が嫁に対し、「茶碗は割るし、地味な女で新婚らしくない、相返答も出来ない、何一つとして取り得の無い出来の悪い嫁だ。何をやらせても遅い」などと再三にわたって悪く罵倒し、干渉し、夫もこれを抑制するどころか、母に同調し、はては親族ともども一方的に非難し、ついに嫁は実家に帰った。

(夫と母は)夫婦共同生活を破壊に導いたものとして不法行為の責任を免れないとして、慰謝料200万円が認められた。

盛岡地裁遠野支部判決(昭和52126日)
無抵抗の妻に対する舅と夫の暴力。妻の元から子供を連れ去るという行為。
「夫の両親が息子夫婦と同居するというのは、夫が普通の勤め人の家庭であれば、夫の両親の側により多くの利益があるものであり、夫婦の側にはそれほど利益がないのが普通である。そうであるならば、その利益を受ける舅や姑の方が息子夫婦と仲良くやっていこうとする多くの努力をするのが当然である。また、夫は、妻の悩みを打ち明けられていながら、積極的に妻と両親の間に立ってその調整を図ろうとしていない」

妻の被った一連の精神的苦痛に対し、共同不法行為として、慰謝料100万円が認められた。

東京高裁判決(昭和35823日)
「舅が息子の妻に対して、継続的な冷淡な態度、虐待および侮辱」
「息子(夫)は、この事実を熟知しながら、傍観し何の策も講じない。離婚もやむなき旨言明し、愛情および婚姻継続の熱意の欠如」

共同不法行為として、慰謝料15万円を認められた。 
 (注)当時の通貨価値

名古屋地裁岡崎支部判決(昭和43129日)
「夫婦の婚姻関係が円満を欠くに至った理由は、妻と舅および姑の間の不仲が原因。妻がいかに努力しようと、夫が無関心な態度を改め、積極的に家庭内の円満を取り戻すよう努力しない限り、婚姻関係の平和を取り戻し、これを維持する事は困難。しかし、夫の態度は変わらず、妻との婚姻を継続する意思すらない」

慰謝料10万円が認められた
ただし、この慰謝料は夫の支払義務として認められたものであって、婚家先との不仲を原因としたものではない点が他とは異なる。この判決では、「嫁と夫の両親との関係は、いずれかの側のみの責任があるというわけでもない」というのが当判例である。

なお、妻の両親と同居する「婿いびり」の事例もあるようです。判例を見つけたら、またご紹介します。

[判例紹介]子の監護者、安易な現状追認を否定した事例

  • 2008.07.30 Wednesday
  • 00:00
 

6歳女子の監護者について、安易な現状追認を否定した事例】(東京高裁平成11920日決定)

[事実経過]
夫婦は1992(平4)年5月に婚姻。
1993
(平5)年女子A1995(平7)年女子Bをもうけた。
その後円満を欠き、1998(平10)年1月、夫は夫婦関係調整調停を申し立てた。
1998
(平10)年7月、夫はA(当時4歳)を連れて家を出て、所在を明らかにしなかった。

1998
(平10)年7月、妻は、ABの監護者を定める審判、Aの引渡しの審判、Aの引渡しの保全処分を申し立て、離婚訴訟を提起した。

1998
(平10)年8月、浦和家裁は、夫に対しAの引渡しの仮処分を命じた。

1998
(平10)年8月、夫は即時抗告。

1998
(平10)年10月、東京高裁、夫の抗告を棄却。

1998
(平10)年10月、夫は弁護士を通じて、裁判所の決定に従う意思はないことを表明。

1998
(平10)年10月、浦和家裁は、妻とABの面接調査を実施。A(当時5歳)は妻(母)に対し激しい拒否的態度を示した。

浦和家裁は、
夫はAの監護養育を自分の母に委ねているが、夫と妻の監護者としての適格性や養育環境は優劣つけがたいこと
Aが妻(母)に激しい拒否反応を示したこと
Aを夫(父)から引き渡すことはAにさらなる精神的外傷を与えること

以上を考慮して、父を監護者に指定。
A
の引渡しを求める妻の申立てを却下。

妻は即時抗告。

[判旨] 1999(平11)年920日東京高裁

原審(浦和家裁)判決取消。差し戻し。

「夫は妻からAを無断で連れ出し、家裁や高裁の保全処分の決定(19988月、10月)にも従わず、地裁の人身保護手続にも全く出頭しなかった。
そうこうしているうちに、Aは夫らとの生活に安定を見いだすようになったという側面があることは否定できない。その現状は安定しているからといって、安易に現状を追認することは相当ではない。
A
の拒否的な態度は驚くほど強い。しかし56歳の子供は周囲の影響を受けやすく、直ちに子の意向として採用し、あるいは重視することは妥当ではない。」

養育が長期化すれば、それになじむのは当然であり、既成事実を積み重ねて形成された現状を追認することを妥当でないとしたものである。夫の司法判断の無視についても強く批判した。子の監護や養育については、実力行使に走りがちとなる関係者に自制をうながした。

[追記] 

原審での面接調査終了後、夫は相互交流の機会を持つことに前向きだったが、妻は夫に対する不信感を強調して、面接調査継続を反対、審理の打ち切りを求めた。

これに対し、裁判所は、母親としてAの将来の福祉を図る観点から、妻に冷静な態度に立ち戻り、差戻し後の原審の審理に協力する姿勢が望ましい、と妻を戒めた。


何が子の利益であるかの判断は容易ではありません。
A
6歳とはいえ、特に精神的発達の早い女の子の心に、傷が残ったと思います。ABの心と体の健全な成長のため、大人は全力を尽くすしかありません。

[判例紹介]内縁に慰謝料が認められた事例

  • 2008.07.28 Monday
  • 23:54
 

【重婚的内縁の不当破棄について慰謝料が認められた事例】(東京地裁平成3718日判決) 

[事実経過]

内縁の夫Y(当時48歳)は、1955(昭30)年頃、X女(当時23歳)に対し、「妻とは離婚する」と言い、結婚の意志があることを明らかにして交際始め、性的関係をもった。
Yには、当時、妻と4人の子供(5歳から14歳まで)がいた。
1958
(昭53)年、X女は夫Yの子を出産、Yは認知した。
X
女は自己の土地に夫Yの費用で建物を建築、ここに居住。Yもここから出社。
Yは友人を招いたり、結婚の媒酌人をしたり、X女の妹の結婚式に参列したり、自分の母親の仏壇や位牌を置いたりしている。

しかし、夫YX女との生活を始めて間もない頃から、A女とも性的関係をもち、子をもうけている。
Y
は、1978(昭53)年、妻と協議離婚。(妻は10年後に死亡)

1986
(昭61)年頃、夫YX女に対し生活費を支払わなくなり絶縁状態になった。
X
女は、夫Yに対し、婚姻予約不履行または内縁不当破棄の不法行為にあたるとして、10億円の慰謝料請求をした。

[判旨]

X
女と夫Yは内縁関係にあたると認定した。
Y
と妻の関係は、戸籍上は離婚の1958(昭53)年まで継続していたものの、X女との内縁関係に入るまでに既に形骸化していた。
重婚的内縁関係であっても、妻との婚姻が形骸化している場合には、内縁関係に相応の法的保護が与えられるべき。これを理由なく破棄することは不法行為にあたる。
X
女に責められる事情があるとも窺えない。
慰謝料1,000万円とする。

[コメント]

判例・学説ともに、法律婚が破綻している場合には、内縁にも法的保護を認めています。法律婚の妻との権利が競合するわけではないので、比較的、慰謝料請求は認められやすくなっています。この場合、離婚と同じ処理になります。共同で形成した財産の清算としての財産分与も、広く離婚の類推適用を認める傾向にあります。

内縁関係の破棄の原因は、新たな女性関係が始まることが多いようです。

私が思うのは、その子供たちへの影響です。自分たちには何の悪さもないのに、親たちの勝手で生まれ育つ環境が決まっています。すべてその親が悪いということではありませんが、子供はできるだけ純粋に生き生き伸び伸びと育って欲しい願いはやみません。

また、上記判例のケースですが、この夫Yと結婚して4人も子供を生み、捨てられ、離婚後10年で亡くなった女性(妻)は成仏できるのでしょうか。
そして、妻の子供、X女の子供、A女の子供
いくらYに資力があるといっても、私はこのようなYには悲しい未来が待っていると思っています。

[判例紹介]高齢夫婦.妻からの離婚請求

  • 2008.07.23 Wednesday
  • 23:33
 

【結婚約40年の高齢夫婦、会社人間の夫に対し、妻から離婚請求。請求棄却の事例】(東京高裁平成13118日判決) *第一審と第二審で結論が分かれたケース

[事実経過]
1960
(昭35)年に婚姻。夫婦はいずれも65歳。

2人(娘A、息子B ともに成人)。
夫は会社中心人間、家庭を犠牲にし、妻への思いやりが欠如することも多し。

妻は献身的に尽くす。

夫は毎朝6時に出勤、夜は9時半過ぎ、たまに11時以降に帰宅。帰宅後も休日も仕事に関する勉強をする。家庭生活も夫の行動が中心。朝は妻が夫のベッドに朝食を運び、歯ブラシを用意、立っている夫に背広を着せ、靴下をはかせる。夫の帰宅の際は必ず家で出迎え、夫が疲れて帰った際に、風呂や夕食の準備が出来ていないことは許されない。
妻は病気がちの体。
1958
(昭33)年卵巣腫瘍の手術、1966(昭41)年椎間板ヘルニア、1986(昭61)年以降、胃がん手術、C型肝炎、変形性股間関節症などの手術や治療が続き、悲観的になり、家事もできなくなった。
その間、妻は感情や望みは押し隠し、ひたすら夫が気に入るような生活を優先するよう必死で我慢してやってきた… が、

妻は離婚を決意。娘Aと共に家を出て別居。
夫は今後も助け合って生活したいと、婚姻の継続を希望。息子Bは離婚に反対。

[第一審](横浜地相模原支判平成11730日判決)
離婚は認められる。
*財産分与として年金からの定期金給付を求めた点で注目を浴びた

夫側は控訴した。

[第二審](東京高裁平成13118日判決)
離婚請求を棄却。
夫は妻の立場を思いやるという心遣いに欠ける面はあったことは否定できないものの、格別に婚姻関係を破綻させるような行為があったわけではない。

夫と妻の年齢、妻の身体的条件等を考慮すると、離婚の道は避けるべきである。

長男Bも婚姻の継続を望んでいる。(ただし、長女Aは父との確執がある)
現段階で諸事情を総合的に判断しても、婚姻関係が完全に破綻しているとまではいえない。

妻側は上告した。

上告は棄却。

【コメント】
一審と二審は、夫の男尊女卑的な言動について、微妙に事実認定および評価が異なります。二審(控訴審)では、夫の思いやりを欠いた行動があったとするものの、この点をあまり重視しませんでした。

【その後】
妻側は上告棄却後、再度離婚調停を申立てる。
1年間の調停。

妻側の2度目の地裁提訴。
2
度目の地裁。
認容判決。

夫側再度控訴。
2
度目の高裁。
認容判決(東京高裁平成17223日判決)

最終的に離婚は認められた。

【コメント】
2
度目の高裁での判決は、1番最初の地裁判決と同じ内容に戻った。
この5年半裁判に拘束された当事者の気持ち、時間を考えると、つらいものがあります。

裁判の判決において、もう少し先を考えた手立てを諭し、講じることはできなかったのだろうか。

[判例紹介]子の引渡し請求

  • 2008.07.18 Friday
  • 00:33
 

判例をご紹介します。
今日は、子の引渡請求の事件です。

14歳男子、11歳男子、9歳女子について、妻から夫への子の引渡し要求がなされた事案】

[事実経過]
父母は1988年(昭63)婚姻。
1989
(昭64)年に男子A1991(平3)年に男子B1993(平5)年に女子Cをもうけた。
夫の暴力、不貞、妻の乳癌治療中の夫の言動などから、妻は離婚を決意。
2000
(平12)年10月、妻は心因反応により2ヵ月の療養が必要との医師の診断を受け、やむなく子らを夫の下に残して、単身で家を出て別居した。

妻は2000(平12)年11月、夫婦関係調整の調停を申し立てた。
夫は同月、自分を親権者とする協議離婚の届出をした。
妻は、即座に離婚無効確認の調停・訴訟を提起した。

同年12月〜翌年1月、夫側弁護士と妻側弁護士が泊り込みで面接交渉の協議をしたが、妻側はあくまで子らの引渡しを求めたため合意に至らず。
2001
(平13)年5月、妻は子らの引渡しを求める審判の申立てをした。
2002
(平14)年2月の審判期日に面接交渉の合意をしたが、夫は実施に難色を示し、週末は子らをヨット教室に通わせ、妻との面接交渉の実施は、ますます困難となる。
同年5月、妻から審判前の保全処分として、子の引渡しの申立てをした。

[原審](横浜家横須賀支審平成1485日)
BCは妻の下での生活を希望しており、Aもやや明確ではないが内心は同様であると判断。
父が母に暴力をふるったり、父が他の女性とつき合い、その女性を家に連れてくる(同居)などの行為を子らが見聞きしており、これらの父の言動が子らに与える影響は無視できないとして、子らの「状況を現状のまま放置しておくのはその福祉に著しく反するから、1日も早く」、子らを妻の下に引き渡すことが「緊急の要請であるといえる」として、引渡しを命じた。

夫から即時抗告。

【抗告審】
原審判決取消。
子の引渡しを求める審判前の保全処分は、子の福祉が害されて早急にその状態を解消する必要があるときや、本審の審判を待っていては、仮に翻案での子の引渡しを命じる審判がされてもその目的を達することができないような場合がこれに当たる。具体的には、子に対する虐待・放任等がなされている場合や、子が相手方(妻)の監護が必要で発達遅滞や情緒不安を起こしている場合などが該当する。
前提となる事実によれば、子らは、現在抗告人(夫)の下で、一応安定した生活を送っていることが認められ、保全の必要性を肯定すべき切迫した事情は認めるに足りない。よって審判前の保全処分の申立てには理由がない。

【コメント】
子は、Aは中学2年、Bは小学5年、Cは小学3年。BCは母方で暮らしたいという意思を表明し、原審はこれを重視。しかし抗告審は、保全処分の要件を厳格に解した結果から出たもの。

【その後の本案】
東京高裁平成15120日、子の引渡しを命じた。
これに対する父からの即時抗告は棄却。

最高裁平成15514日、さらに夫からの許可抗告も棄却され終結した。

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行政書士萩本勝紀

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